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「FUSIONS」

小川晴輝個展
2016年12月16日(金) - 18日(日)
Frantic Gallery、東京

オープニングレセプション:12月16日(金)18:00~20:00
 
 
 近作のSF映画「メッセージ」のなかで地球に到来したエイリアンは極めて精緻な構造に基づいて、触手から発生するインクのような円を用いてコミュニケーションを行います。その円は空を描きながら、同時に始点と終点から逆方向に構成される文のように複雑な非線形のメッセージのように組織化されています。この映画ではエイリアンが到来した目的を知るためにシンクロニシティに基づいた知覚を要するメッセージを解読しようとする人間の試みが描かれています。

しかしながらこうした思考の構造を提案するのは映画のエイリアンだけではありません。例えば日本語の、主体が省略されながらも前提として文頭にあり、文章の意味を担う働きのもっとも大きい動詞が最後におかれるという文法それ自体に前述の構造と共通する点があります。筆者はこの文章を書くにあたって主体をマークし動詞を決めて頭の中に入れたのち、文頭と文末から同時に文章のなかへ駈け込んでメッセージを締めくくります。また読者のほうでは自分でこのメッセージを頭とおしりから掬い上げ、向かい合わせの方向からはめ込んでいきます。ある意味、日本語の書き手/読み手は意味作用のリングを交換してコミュニケーションをとっており、日本文化において円/包むことは基本的な形象/実践となっています。

美術作品もまた似たような構造をもっています。そして、こうしたアプローチは小川晴輝の新作をとらえるうえで有効な方法のひとつです。小川は異素材(綿麻布、綿布、麻など)のカンヴァスを組み合わせて影(陰)を効果的に用い、複数の画面を貫通するダイナミックな要素を(油絵具、アクリル絵具、アルキド絵具を使って)作り出します。彼のイメージはひとつの入口を提案しません。絵画は把握不能な「空」である真ん中へ異なる方向から同時に近づいて視覚的な本体全体を包み、シンクロニシティで知覚するよりほかない結び目のように組成するのです。Frantic Galleryでは12月16日(金)よりボロメロの環のような小川の絵画作品を発表いたします。ぜひ、知覚の一線を越えたみなさんの触手で作品を包みこんでください。

 
Fusion IX, oil, alkyd, acrylic on linen, hemp, cotton canvas, 97.5x108.3x6cm, 2016
接 Ⅱ / Contact II, oil, alkyd, acrylic on linen canvas, 97.4x108.2x6cm, 2016
Fusion VII, alkyd, acrylic on cotton-hemp, hemp canvas, stainless steel, plywood, 98x109x6cm, 2016
Fusion IV, acrylic on cotton canvas, 98x110x6cm, 2016
「無可視場成視」と題された作品で、小川は4つの日本民話(浦島太郎、因幡の白兎、カチカチ山、おむすびころりん)を結合させて物語の環を創造します。絵画の二次元面に見えるのは、スケールの相互作用、並置された視点、そして描かれたストーリーが複雑に重なった空間性です。「無可視場成視」は物語の線形の構造を超えて、「読者」に向けて存在することのない場を生成しながら視覚的な物語の連続体をひとつの無限の円へと統合していきます。
 
無可視場成視 / Mukashi Banashi, oil, alkyd, acrylic on hemp, cotton canvas, 97.5x108.4x6.2cm, 2016
Frantic Gallery
Ikejiri Institute of Design 309C,
2-4-5 Ikejiri, Setagaya,
Tokyo, Japan 154-0001


 
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